2026/09/07
経理の「自社完結」と「外注」の境界線。失敗しない…
コラム

経理業務の効率化を検討する際、真っ先に上がるのが「どこまで自社でやり、どこからを外部に任せるか」という悩みです。
すべてを自社で抱え込めば人件費や属人化のリスクが生じ、一方で安易にすべてを外注すれば、社内に経営数値の感覚が残らないという懸念も出てきます。
税理士事務所の立場から多くの現場を拝見していると、業務の「性質」によって仕分けを行うことで、スムーズな運用ができているケースが多いと感じます。
今回は経理業務を「自社」と「外注」に切り分けるための具体的な基準を整理します。
業務の仕分けの最も大きな基準は、その業務に「自社独自の判断」が必要かどうかです。
一般的に、ルーチン化された「作業」は外注に向いており、社内の状況に応じた「判断」や「承認」が必要な業務は自社に残すべき領域といえます。
この境界線を曖昧にすると、外注先に都度確認が発生し、かえって手間が増えてしまうことになりかねません。
① 発生頻度と定型化の度合い
• 外注向き: 領収書の入力(記帳代行)、給与計算、振込データの作成代行など。
これらはルールが明確で、毎月一定の作業が発生するため、外部に任せることで社内リソースをコア業務に集中させることができます。
• 自社向き: 経費の承認、請求書の発行、入金消込など。
「その支出が妥当か」の判断や、顧客との関係性に直結する発行業務は、社内で完結させるのが望ましいといえます。
② 専門性と最新情報の必要性
• 外注向き: 法改正への対応(インボイス制度や電帳法など)、年末調整、償却資産税の申告など。
最新の税制知識が必要な分野は、専門家である税理士事務所側に任せることで、ミスや確認漏れのリスクを大幅に軽減できます。
• 自社向き: 日々の現預金管理、勤怠の一次確認など。
現場に近い情報が必要な一次的な管理は、自社で行う方がスピード感を持って対応できます。
③ 経営判断への影響度
• 外注向き: 試算表の作成、固定資産台帳の管理など。
正確な「過去の数字」を整理する工程は、客観的な視点を持つ外部が適しています。
• 自社向き: 資金繰りの予測、予算実績管理、投資判断など。
整理された数字をもとに「未来をどうするか」を考える業務は、経営の根幹であり、自社が主体となって行うべき領域です。
最近では「すべて外注」か「すべて自社」かの二択ではなく、クラウド会計ソフトを活用したハイブリッド型の運用も増えています。
例えば、「証憑のアップロードまでは自社で行い、仕訳の確認と確定は税理士事務所が行う」といった形です。
これにより、自社でリアルタイムに数字を把握しつつ、実務の負担と専門的なチェックを外部に委託することが可能になります。
経理業務の仕分けにおいて重要なのは、「コスト削減」だけでなく「業務の安定性とスピード」のバランスです。
自社でしかできない「判断」に集中し、標準化できる「作業」や専門的な「制度対応」を外部に委託する。
この役割分担を明確にすることが、結果として強い経理組織を作る近道となります。
自社の現在のフローを一度棚卸しし、「この業務は本当に自社で抱える必要があるか?」と問い直してみることから始めてみてはいかがでしょうか。
この業務の仕分けが自社で難しい場合には、そこから一緒にできればと考えています。

K&P税理士法人
山口 貴澄
経理業務改善、経理体制構築、クラウドツール導入支援
大学卒業後、建築業界、学習塾の教室長などを経た後、ベンチャー企業の経理業務に従事。
その後、中小企業の経理業務の効率化に貢献したいとの思いから、会計事務所業界に転身し、2020年にK&P税理士法人へ入社。
前職で多業種から経理業務改善の相談に対応した経験から、クラウド・ITツールを活用した経理フローを構築し、経理業務の負担を圧倒的に軽減する提案に定評あり。
特に、マネーフォワードのクラウド会計の導入支援を得意とするほか、初級シスアド(現ITパスポート)、Excel表計算処理技能認定試験1級も保有。
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