2025/10/20
経理業務の「属人化度」を数値で見える化する方法
コラム
中小企業や成長期の企業では、経理業務が特定の社員に依存してしまう「属人化」が大きなリスクとなります。経理担当者が休職・退職すれば、日常の仕訳や支払処理だけでなく、月次・年次の決算業務も滞り、経営判断に必要な数値が揃わなくなる恐れがあります。
そのため、経理における「属人化の排除」は重要なテーマです。
しかし、属人化は目に見えにくく、「当社の経理はどの程度属人化しているのか」を客観的に測るのは難しいと感じる経営者も多いでしょう。そこで有効なのが、属人化の度合いを数値化して見える化する手法です。今回はその具体的な考え方と実践方法をご紹介します。
経理業務の属人化を見える化するには、まず「どの業務が誰に依存しているか」を洗い出すことが出発点です。属人化度を数値化する際の代表的な視点は以下の3つです。
1. 業務の分担度合い
・仕訳入力、請求書処理、給与計算、決算処理などを「複数人で対応できるか」「一人しかできないか」で
分類します。
・一人にしかできない業務が多ければ、属人化度が高いと判断できます。
2. マニュアル・手順書の整備度
・業務の流れが文書化されているかどうかは、属人化の排除に直結します。
・マニュアルがなければ、担当者不在時に業務が止まるリスクが高まります。
3. システム化・標準化の進捗度
・クラウド会計や経費精算システムを活用していれば、作業は平準化されやすく、属人化度は下がります。
・逆に、紙やエクセルだけに依存している場合は、個人の経験に頼りやすくなります。
これらの要素を数値として点数化することで、属人化度を客観的に可視化することが可能になります。
属人化度を見える化する具体的なステップは次の通りです。
1. 業務一覧表の作成
経理の主要業務をリストアップします。例えば「請求書発行」「売掛金管理」「仕訳入力」「月次試算表作成」
「決算整 理仕訳」などです。
2. 依存度を点数化
各業務ごとに以下のような基準で点数をつけます。
・複数人が対応可能・マニュアルあり:1点
・一部の人しか対応できない:3点
・特定の一人に完全依存:5点
3. 集計・平均化
全業務の平均点を算出し、3点以上であれば属人化が進んでいる可能性が高いと判断します。
4. 改善対象の特定
特に点数が高い業務をピックアップし、属人化の排除に向けて「マニュアル化」「システム化」「教育・引き継ぎ」
のいずれかで改善計画を立てます。
この方法で属人化度をスコアとして把握すれば、感覚的な議論ではなく、経営会議で具体的な数値をもとに改善を進めることができます。
属人化度を数値化した後は、具体的な改善策を講じる必要があります。属人化の排除につながる代表的な施策は以下の通りです。
1. マニュアル整備
経理担当者の操作手順を画面キャプチャやチェックリスト形式で残すと、誰でも同じ処理ができるようになります。
2. システム導入
クラウド会計や経費精算システムを活用すれば、入力や承認フローが標準化され、属人化が自然と排除されます。
3. ローテーション・教育
定期的に担当業務を入れ替えることで、一部の人に依存しない体制を築けます。
新人や他部署のスタッフにも簡単な経理業務を経験させることは有効です。
4. 外部専門家の活用
税理士事務所や経理代行サービスを利用すれば、第三者の視点から属人化の排除を実現できます。
特に決算業務のような専門性の高い作業では効果的です。
属人化の排除を進めることで、経理体制は安定し、経営者にとっても安心できる環境が整います。
経理業務の属人化は、企業の成長を阻害し、突然の担当者不在によるリスクを招きます。そのため、属人化の排除は経営上の重要課題です。
属人化度を「業務分担」「マニュアル整備」「システム化」の3つの視点で点数化することで、客観的な見える化が可能になります。さらに、数値化されたデータをもとに改善策を検討すれば、経理の属人化の排除を計画的に進められます。
属人化を排除し、誰が担当しても滞りなく回る経理体制を整えることが、健全な企業経営につながります。
K&P税理士法人
山口 貴澄
経理業務改善、経理体制構築、クラウドツール導入支援
大学卒業後、建築業界、学習塾の教室長などを経た後、ベンチャー企業の経理業務に従事。
その後、中小企業の経理業務の効率化に貢献したいとの思いから、会計事務所業界に転身し、2020年にK&P税理士法人へ入社。
前職で多業種から経理業務改善の相談に対応した経験から、クラウド・ITツールを活用した経理フローを構築し、経理業務の負担を圧倒的に軽減する提案に定評あり。
特に、マネーフォワードのクラウド会計の導入支援を得意とするほか、初級シスアド(現ITパスポート)、Excel表計算処理技能認定試験1級も保有。
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