2026/08/10
社内に経理の相談相手がいない中小企業が抱える落と…
コラム

中小企業において、経理部門は「1人体制」あるいは「経営者やそのご家族が兼務している」というケースが少なくありません。
日々の請求書発行や帳簿付けといった実務は問題なく回っていても、ふとした疑問やイレギュラーな取引が発生した際、社内に「ちょっと相談できる相手」が誰もいないという状況は、実は目に見えないリスクをはらんでいます。
税理士事務所の立場から多くの企業様を拝見していると、相談相手がいない状態が続くことで、結果として大きな不利益を被ってしまっているケースが見受けられます。
社内に経理の相談相手がいない中小企業が陥りがちな落とし穴と、その対策について整理します。
インターネットで検索すれば、多くの税務・会計情報が手に入る時代です。
そのため、分からないことがあっても「ネットで調べて、なんとなくそれらしい方法で処理した」ということで完結させてしまいがちです。
しかし、税法や会計ルールは個々の企業の「具体的な状況(売上規模、業種、過去の届出状況など)」によって適用される内容が異なります。ネットの一般的な情報を自社にそのまま当てはめた結果、後から誤りに気づくというケースは後を絶ちません。
① 税務調査での予期せぬ指摘
「これまでずっとこの方法でやってきて何も言われなかったから大丈夫」と思っていても、それが単に税務調査に入られていなかっただけ、という場合があります。
相談相手がいない環境では、間違った解釈が社内で「正しいルール」として何年も定着してしまい、税務調査の段階になって多額の追徴課税を指摘されるという落とし穴があります。
② 節税チャンスや補助金・優遇税制の活用漏れ
近年の税制改正では、中小企業向けの税額控除や賃上げに伴う減税措置など、活用次第で大きなメリットを得られる制度が数多く打ち出されています。
しかし、社内で実務をこなすだけで精一杯の環境では、こうした「自社が使えるはずの優遇策」の存在自体に気づけず、結果として損をしてしまっているケースが見受けられます。
③ 経営判断に必要な数字の遅れと孤立
経理担当者が1人で悩みを抱え込むと、処理が滞りやすくなり、月次決算の確定が遅れる原因になります。
また、経営者自身が経理を兼務している場合、数字の妥当性を客観的にチェックしてくれる相手がいないため、「この数字の捉え方で本当に合っているのか」という不安を抱えながら経営判断を迫られることになります。
社内に専門家を新しく雇うのはコスト面でも現実的ではありません。だからこそ、外部の存在を上手に「社内の相談相手」として組み込む視点が重要です。
• 「こんなこと聞いていいの?」をなくす
日常のちょっとした疑問や、「他社はどうしているのか」といった実務の運用方法など、些細なことでも定期的に税理士事務所へ投げかける習慣をつけることが大切です。
• 事後報告ではなく「事前相談」をルールにする
「高額な資産を購入する前」「新しい取引先と契約する前」など、お金が動く“前”に一言相談できる関係性を外部と築いておくことで、落とし穴の多くは未然に防ぐことができます。
社内に経理の相談相手がいないということは、担当者や経営者が「すべての判断の責任を1人で背負っている」状態を意味します。
大切なのは、自社だけで正解を導き出そうとするのではなく、気軽に意見を求められる「外の窓口」を持っておくことです。信頼できる相談相手を味方につけることが、結果として企業の財務基盤を強固にし、健全な経営を続けるためのセーフティネットとなります。
現在の経理体制において、「1人で抱え込んでいる判断」がないか、一度振り返ってみてはいかがでしょうか。

K&P税理士法人
山口 貴澄
経理業務改善、経理体制構築、クラウドツール導入支援
大学卒業後、建築業界、学習塾の教室長などを経た後、ベンチャー企業の経理業務に従事。
その後、中小企業の経理業務の効率化に貢献したいとの思いから、会計事務所業界に転身し、2020年にK&P税理士法人へ入社。
前職で多業種から経理業務改善の相談に対応した経験から、クラウド・ITツールを活用した経理フローを構築し、経理業務の負担を圧倒的に軽減する提案に定評あり。
特に、マネーフォワードのクラウド会計の導入支援を得意とするほか、初級シスアド(現ITパスポート)、Excel表計算処理技能認定試験1級も保有。
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