2026/01/19
経理業務の遅延が会社に与える“見えない損失”とは
コラム

経理業務は、売上のように直接利益を生み出す業務ではありません。
そのため、多少処理が遅れていても「大きな問題にはならない」と考えられてしまうことがあります。
しかし、税理士事務所の立場から多くの企業を見ていると、経理業務の遅延が、会社経営にじわじわと影響を及ぼしているケースが少なくありません。
しかもその影響は、数字としてすぐに表れない「見えない損失」として蓄積していくことが多いように感じます。
経理業務の遅延が会社にどのような影響を与える可能性があるのか、実務の視点から整理していきます。
経理業務の遅延は、特別な事情がなくても発生することがあります。
例えば、次のような状況が重なっているケースがよく見受けられます。
・日常業務が忙しく、経理処理が後回しになっている
・経理担当者が少人数で、業務が集中している
・月末や決算期にまとめて処理する体制になっている
これらは多くの会社で起こり得ることであり、必ずしも「管理が甘い」という話ではありません。
ただし、こうした状態が続くと、経理業務の遅延が常態化しやすくなります。
一度遅れが出始めると、「今月も仕方がない」「落ち着いたら処理しよう」となり、結果として遅延が積み重なってしまうことがあります。
経理業務が遅れることで、すぐに罰則やトラブルが起きるとは限りません。
しかし、次のような“見えない損失”が発生している可能性があります。
① 経営判断のスピードが落ちる可能性
月次の数字が固まらない状態では、正確な損益や資金繰りを把握しにくくなります。
その結果、設備投資や人員配置などの判断が遅れるケースがあります。
② 資金繰りリスクに気づきにくくなる可能性
経理処理が遅れていると、実際のキャッシュの動きと帳簿上の数字にズレが生じやすくなります。
このズレが続くと、資金繰りの変化に気づくタイミングが遅れることがあります。
③ 経理担当者の負担が増えやすい
処理が溜まった状態でまとめて作業を行うと、残業や休日対応が増えることがあります。
結果として、ミスが起きやすくなったり、担当者のモチベーション低下につながることも考えられます。
④ 税務対応が後手に回る可能性
経理業務が遅れていると、決算や確定申告の準備が直前になりがちです。
余裕のない状態で進めると、本来検討できた節税策を見逃してしまうこともあります。
経理業務の遅延を完全になくすことは、簡単ではありません。
しかし、進め方を少し見直すことで、改善につながる可能性があります。
例えば、
・経理処理を月末に集中させず、日次・週次で分散する
・書類提出や経費精算のルールを明確にする
・会計ソフトやクラウドツールの活用を検討する
といった取り組みは、比較的取り入れやすい方法です。
また、社内だけで対応が難しい場合には、記帳代行や月次チェックなど、外部の専門家を部分的に活用するという選択肢もあります。
すべてを任せるのではなく、「遅れやすい部分だけ支援を受ける」という形も考えられます。
経理業務の遅延は、目に見えるトラブルが起きにくいため、後回しにされがちです。
しかし、経営判断の遅れや資金繰りリスク、担当者の負担増加など、会社にとっての“見えない損失”が積み重なっている可能性があります。
経理業務が遅れていると感じた場合は、担当者の努力不足ではなく、業務の進め方や体制に目を向けてみることが大切です。
日々の処理を少しずつ分散する、ルールを整理する、外部の力を借りるなど、できるところから取り組んでみることで、状況が改善するケースもあります。
経理業務を整えることは、会社の数字を正しく把握するための土台づくりです。
見えにくい損失を防ぐためにも、一度立ち止まって経理業務の流れを見直してみてはいかがでしょうか。

K&P税理士法人
山口 貴澄
経理業務改善、経理体制構築、クラウドツール導入支援
大学卒業後、建築業界、学習塾の教室長などを経た後、ベンチャー企業の経理業務に従事。
その後、中小企業の経理業務の効率化に貢献したいとの思いから、会計事務所業界に転身し、2020年にK&P税理士法人へ入社。
前職で多業種から経理業務改善の相談に対応した経験から、クラウド・ITツールを活用した経理フローを構築し、経理業務の負担を圧倒的に軽減する提案に定評あり。
特に、マネーフォワードのクラウド会計の導入支援を得意とするほか、初級シスアド(現ITパスポート)、Excel表計算処理技能認定試験1級も保有。
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