2026/06/08
「経理の属人化」を防ぐ。担当者不在のリスクを最小…
コラム

多くの企業において、経理業務は「特定の担当者しか詳細を把握していない」という状態に陥りやすい傾向があります。
しかし、急な病気や退職など、担当者が不在になるリスクは常に存在します。その際、業務が完全に止まってしまうことは、支払いの遅延や決算の混乱を招き、企業の信用問題にも発展しかねません。
税理士事務所の立場から見ても、経理の属人化解消は、単なる効率化を超えた「経営上のリスク管理」として非常に重要であると感じます。
経理担当者が不在になっても業務を継続するための具体的な備えについて整理します。
経理業務が属人化する最大の要因は、業務のプロセスが「個人の記憶」や「独自のメモ」に頼っていることです。
まずは、誰が見ても現在の状況が把握できる「仕組み」を作ることが、リスク管理の第一歩となります。
担当者がいなくても業務を回すために、以下のポイントから整備を検討してみてください。
① 業務フローの可視化とマニュアル化
「どの資料を、いつまでに、どこへ提出し、どのシステムに入力するか」という一連の流れを可視化します。
立派なマニュアルをゼロから作るのが難しい場合は、まずは「月間スケジュール表」を作成し、主要なタスクと期限をリスト化するだけでも大きな効果があります。また、システムのログイン情報やパスワードの管理方法を組織として共有しておくことも不可欠です。
② クラウドツールの活用による「情報の共有化」
紙の伝票やエクセルファイルが特定のパソコンに保存されている状態は、物理的なリスクを伴います。
クラウド会計やチャットツール、共有ストレージを活用することで、担当者以外でも「今、どの作業がどこまで進んでいるか」をリアルタイムで確認できるようになります。情報の置き場所をオープンにすることが、ブラックボックス化を防ぐ有効な手段です。
③ 税理士事務所との「情報の同期」を高める
自社と税理士事務所で同じクラウド画面を共有していれば、万が一自社の担当者が不在になっても、税理士事務所側で状況をある程度把握し、フォローに入ることが可能になります。
日頃から税理士事務所を「外部のバックアップ拠点」として位置づけ、業務の内容を共有しておくことは、中小企業にとって極めて強力なリスクヘッジとなります。
人数の限られた組織では、完全に二人体制を組むことは現実的ではありません。
その場合は、「自社で行うのは最低限の確認のみとし、実務の多くを外部(経理代行など)へ切り出す」ことで、組織としての継続性を担保する手法も有効です。
「作業の担い手」を外部に分散させておくことで、社内の担当者が入れ替わった際の影響を最小限に抑えることができます。
経理業務のリスク管理において重要なのは、「担当者がずっと居続けること」を前提にしないことです。
業務の可視化やシステムのクラウド化、そして税理士事務所との連携強化を通じて、属人化を排除した体制を整えることが、結果として担当者自身の心理的負担を減らすことにもつながります。
「もし明日、担当者がいなくなったら?」という視点で、一度自社の経理フローを見直してみてはいかがでしょうか。

K&P税理士法人
山口 貴澄
経理業務改善、経理体制構築、クラウドツール導入支援
大学卒業後、建築業界、学習塾の教室長などを経た後、ベンチャー企業の経理業務に従事。
その後、中小企業の経理業務の効率化に貢献したいとの思いから、会計事務所業界に転身し、2020年にK&P税理士法人へ入社。
前職で多業種から経理業務改善の相談に対応した経験から、クラウド・ITツールを活用した経理フローを構築し、経理業務の負担を圧倒的に軽減する提案に定評あり。
特に、マネーフォワードのクラウド会計の導入支援を得意とするほか、初級シスアド(現ITパスポート)、Excel表計算処理技能認定試験1級も保有。
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